コスメの排水問題と環境配慮レベル:肌にも地球にも優しい選び方
はじめに
毎日のスキンケアやメイクアップは、私たちの肌に潤いや彩りを与えてくれます。しかし、使用後に洗い流される多くのコスメの成分は、排水として環境へと流れ出ていきます。この「排水」が、実は地球環境に影響を与える一つの要因となり得ることをご存知でしょうか。
地球想いコスメレビューでは、製品の使用感だけでなく、その製品が持つ環境への配慮に焦点を当てています。今回は、日々のコスメ選びにおいて見落とされがちな「排水」にまつわる環境問題と、肌にも地球にも優しい選択肢についてご紹介します。
コスメの排水が環境に与える影響
コスメに含まれる様々な成分が排水として川や海に流れ込むと、水生生物や生態系に影響を与える可能性があります。特に問題視されているのが、以下の点です。
- マイクロプラスチック: スクラブ剤などに含まれる微細なプラスチック粒子は、自然界で分解されずに残り続け、海洋生物が誤って摂取するなど生態系を汚染します。最近では、洗い流されるメイクアップ製品などに含まれるごく小さなプラスチックポリマーも懸念されています。
- 特定の化学物質: 一部の防腐剤や紫外線吸収剤などは、内分泌かく乱作用(生物のホルモンバランスを崩す作用)を持つ可能性が指摘されており、魚類などの繁殖に影響を与えることが懸念されています。
- 生分解性の低い成分: 自然界の微生物によって容易に分解されない成分は、長期間環境中に残留し、水質汚染の原因となることがあります。
これらの成分が環境に与える負荷を減らすために、コスメ選びにおいて「排水後のこと」を考えることが重要になっています。
生分解性とは?初心者でもわかる環境への優しさ
環境配慮型コスメの話によく出てくる言葉に「生分解性」があります。これは、物質が自然界の微生物の働きによって、水や二酸化炭素などの無機物に分解される性質のことです。
例えば、果物の皮や葉っぱは、時間が経つと土の中で分解されて自然にかえります。これらは生分解性が高いと言えます。一方、プラスチックのように、自然界でほとんど分解されない、あるいは分解に非常に長い時間がかかるものは、生分解性が低いということになります。
コスメの成分において生分解性が高いということは、洗い流された後に環境中でも比較的速やかに分解され、地球への負荷を軽減できる可能性が高い、ということです。全ての成分が生分解性である必要はありませんが、特に洗浄成分や乳化剤など、排水に含まれやすい成分の生分解性が高い製品を選ぶことが、環境への配慮に繋がります。
排水に配慮したコスメの選び方
では、具体的にどのような点に注目して製品を選べば良いのでしょうか。
1. 成分に注目する
- 植物由来成分の多さ: 石油由来の合成成分に比べ、植物由来の成分は一般的に生分解性が高い傾向にあります。パッケージの成分表示を見て、植物エキスや植物油などが上位に多く表示されているかを確認するのも一つの方法です。ただし、植物由来だからといって全てが生分解性が高いわけではありません。
- 特定の懸念成分を避ける: マイクロプラスチック(例: ポリエチレン、ポリプロピレンなど)や、環境中での蓄積や影響が懸念されている一部の化学物質(例: オキシベンゾンなどの特定の紫外線吸収剤、一部のシリコーンなど)を含まない製品を選ぶことも重要です。最近では、「マイクロプラスチックフリー」などを明確に表示している製品も増えています。
- 洗浄成分の種類: 洗顔料やボディソープなどの洗浄成分には様々な種類があります。石けん系の洗浄成分や、アミノ酸系の洗浄成分の中には、生分解性が比較的高いものが多いと言われています。
成分表示は難しく感じるかもしれませんが、「〇〇フリー」「〇〇不使用」といった表示や、環境配慮をアピールしているブランドの情報などを参考に、少しずつ関心を持つことから始めてみるのが良いでしょう。
2. 認証マークを確認する
エコサートやコスモス認証など、一部のオーガニック・ナチュラルコスメ認証は、成分の由来や製造過程に加え、生分解性や環境負荷に関する基準を設けている場合があります。これらの認証マークがある製品は、一定の環境基準を満たしていると考えられます。
3. 製品のタイプを考える
洗い流す必要のないスキンケア製品(例: クリーム、美容液など)やメイクアップ製品は、排水として流れ出る成分が少ないため、この点においては環境負荷が低いと言えます。必ずしも洗い流す製品を避ける必要はありませんが、製品のタイプによって環境への影響の仕方が異なることを理解しておくことも役立ちます。
また、固形タイプのソープやシャンプーなどは、プラスチックパッケージの使用を削減できるだけでなく、シンプルな成分構成であることが多く、排水負荷が比較的低い傾向にあります。
その他の環境配慮のヒント
排水問題への配慮だけでなく、日々の使い方の中で環境負荷を減らす工夫もできます。
- 使用量を適切にする: 必要以上に多くの量を使わないことで、洗い流される成分の総量を減らすことができます。
- エコな洗浄方法: 洗顔料やボディソープを使った後、泡やヌルつきをきれいに洗い流すことは大切ですが、必要以上に大量の水を長時間流し続けないように心がけることも小さな一歩です。
- 容器の扱い: 使い終わった化粧品容器は、お住まいの自治体のルールに従って適切に分別・リサイクルしましょう。一部のブランドは、空き容器の回収プログラムを実施しています。
まとめ
日々のコスメ選びは、肌への効果や使用感だけでなく、地球環境への影響も考慮する時代になってきました。特に、洗い流される「排水」に含まれる成分は、水環境に負荷を与える可能性があります。
生分解性の高い成分を選んだり、マイクロプラスチックなどの懸念成分を避けたりすることは、肌と地球、両方を想う賢い選択肢です。難しく考えすぎず、まずは成分表示を少し気にしてみる、環境配慮を謳っているブランドに注目してみるなど、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
私たち一人ひとりの小さな意識の変化と選択が、より持続可能な未来へと繋がっていくはずです。